しまんと日記

夏の終わり、高知の四万十に友だちにあいに行ってきた。

yumahare(ユマハレ)という屋号で手縫いで洋服を仕上げたり、繕いものをしたりする井上香織ちゃんの暮らす家。

 

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香織ちゃんとのおつきあいはなんやかんやですでに長く、ろうそく夜でも、古いセーターからつくるくつ下の会や、ももひきの会でお馴染みの、あの香織ちゃん。

わたしは香織ちゃんの、あたらしくうみだすのではなく、ここにあるもので使わなくなったものから生まれ変わらせる暮らしという精神に、とても惹かれていて、ものをただのものとしてでなく、まるで物語を紡いでいるような姿に、いつもいつも、はっとさせられるのです。

 

そして久しぶりに会った香織ちゃんは相変わらず、少女のように小さくて、屈託なくて、でもおばあちゃんのようにたくましく、時々弱々しくも見えるけど、ひとりで山の中の古屋を、こつこつと作り上げているのだから、やはりたくましいのだろう。

 

わたし世代が子どもの頃住んでいたくらいの古い家。

家の前には、すでにわたしたちが生まれる前から立っていたであろう古木が2.3本、蔦が絡まった状態で、家を守るようにして囲っている。ラピュタにでてくるこわれたロボットみたいに。

家のまわりは草が茂っているが、よく見ると、ハーブやかわいいお花がいろいろ植わっていて咲いている。

香織ちゃんが、出かけるたびに拾ったりもらったりしたと思われる草花や野菜の苗を、植えたり挿し木したりして、少しずつ少しずつ増やしたのがわかる。

 

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お庭は楽しいほどにごちゃごちゃと賑やかで、少し歩くと畑があり、そこにはまた不規則に、でもリズミカルに畝が作られていて、いろいろなお野菜が豊かに実っていた。

まだ夏真っ盛りなので、いろいろな虫たちもたくさんいたが、不思議と蚊に刺されることもなく、晩ごはんの収穫をした。畑では虫たちをはじめ、色んな野菜、草花たちそれぞれに話しかけられて、スマホなんかよりも相当な情報量だった。

 

畑からは山の連なりが向こうのほうまで見渡せた。

 

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 晩ごはんは畑から採ってきた葉物をサラダにして、持っていったじゃがいもや玉ねぎは薪ストーブで火おこしをして茹でたり炒めたりした。

お米がないからと、餅米をご飯代わりに炊いた。

 

ご近所さん(といっても車で40分というていた)のパーラー雨のさっちゃんが、ひとりで会いにきてくれた。

さっちゃんこそ会うのは何年ぶり?の嬉しい再会だった。

 

香織ちゃんとさっちゃんと、一緒に行ったattaのせいこちゃんと4人で、夜遅くまで話した。

 

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話が尽きるとこんどは、ヨガをしたりマッサージやテルミーのしあいっこをして、からだについてまた話した。

 

香織ちゃんの家はひとりで暮らすには広すぎると思うけど、庭とは真逆にすっきりと物がない部屋は、わたしたちゲストにはほんとうに心地よい、高価な山のホテルのようだった。

 

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翌朝も畑から、サラダにする野菜を収穫して、持って行ったパンとで軽めの朝ごはんを食べた。

朝のゆっくりした時間が心地よくて、香織ちゃんが馬頭琴をでたらめに弾いているうちに、せいこちゃんはまた寝てしまった。

わたしも馬頭琴の音色に惹かれて、好きに弾いていると、香織ちゃんがかぼちゃのアイスクリームを作ってくれた。

滝におよぎに行ったあと、食べる用だ。

 

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そして車で、行ってみたかった滝に連れて行ってもらった。

車はどんどん山の上。

香織ちゃんはすれ違う車の人、みんなと、ちゃんと目を合わせ挨拶していた。

 

滝のなまえは龍神の滝。

龍が悠々と泳いでいるようにみえるからだと、説明されなくてもわかるくらい、迫力があり美しい場所だった。

 

山あいにある滝なので、陽があたるのが正午のたった1時間くらい。

なので、その時間じゃないと寒くて水には入ることができないそう。

その滝は、滝にしてはめずらしく滝壺まで泳ぐことができる。

わたしはどうしても、この滝に入りたかったので、寒くても無理してどんどん入っていった。

水の冷たさで耳の奥が痛かったけど、がまんして潜った。

 

香織ちゃんが岸のほうで横笛を吹いている姿がボンヤリ見えた。

わたしは龍になったようなきもちで、水にからだを浮かべた。

水が落ちる音が凄くて、誰の声も、笛の音も聞こえなかった。

 

水からあがると、香織ちゃんが水筒からあったかいお茶を、口の広い木のお椀に注いでくれた。

心からほっとして、きてよかったって思った。

 

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帰ったら、香織ちゃんのお気に入りの散歩コースを案内してもらった。

散歩というても、なかなか険しい道なき山の中をのぼったりおりたり。

栗が落ちていたり、アケビの蔓をみつけたり、青柚子をちぎったり。

香織ちゃんは、こころからこの山をきにいっていた。

 

 

あっというまの高知のたび。

道中せいこちゃんと色んな話ができたのもよかった。

せいこちゃんは、私がやっちゃんの話しかしよらんかったと言われたが、そんなことない。せいこちゃんの普段はしないような話が聞けて、よかった。

 

香織ちゃんの暮らしにふれて、わたしは自分のしたい仕事や、暮らしが明確になった。

しばらく余韻を楽しんでいたが、余韻ていうより、相当な刺激を受け、これからの道すじにはっきりとした輪郭がみえてきた。

香織ちゃんの暮らし、また見たい。

迷ったら、行く場所になると思う。

 

 

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写真 井上香織